父が亡くなったのは、小1の9月。
母が泣いている にも書いたように、
悲しいとかつらいとかよくわからなかった。
父は、メガネをかけていて
ヘビースモーカーだった。
まだ家族で千葉にいる時に、
私が小児喘息の疑いありと言われて
よく咳き込んでいたらしいが、
そんなことは一切気にせず、
私の前でもいつも煙草を吸っていた。
煙草のにおいの父が、大好きだった。
大好きだったけれど、
父がいないという悲しみが
じわじわとわかるようになったのは、
涙するようになったのは、
小学校高学年の頃だったと思う。
父にとても可愛がられていたせいか、
私は何回も父の夢を見た。
おかげで悲しくなかったのかどうかはわからない。
ある日、寝ていた私がフッと体を起こし、
母と姉に向かって「シーっ!」と
人差し指を口に当てて、言い始めたらしい。
「何?どうしたの?」と母が聞くと、
「パパが来てるから黙ってて」
そう言って、パタリと寝てしまった私は、
翌日聞いても何も覚えていなかったそうだ。
本当に来ていたんじゃないかな、と思う。
そういえば、こんなこともあった。
「お姉ちゃんに言ったらダメよ」と
母が笑顔で私に紙袋を渡してきた。
父専用の洋服タンスから見つけたらしい、
その紙袋の中には、
私への洋服が何点か入っていた。
「何でお姉ちゃんに言ったらだめなの?」
「ダメなものはダメ!」
さっきまで笑顔だった母は
ピシャリと怒って「早く隠しなさい!」と言った。
隠しなさいと言われても、と
おろおろしたのを覚えているが
結局どこに隠したかは覚えていなくて、
本当にこの頃の記憶がほとんどなくて困る。
ほとんどが、後で母から聞いた後付けの記憶。
もしかして作り話もあるんだろうか。
いや、作り話ができるような人ではなかった。
そんな父専用の洋服ダンスも、
母専用になり、父のものは家の中から
どんどんなくなっていった。
代わりに違うものが入ってきた。
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